日野市多摩平8丁目のブログ

主に日野市多摩平およびその周辺の歴史や話題を語ります

多摩平団地の開発方針

戦後、東京の人口が増加していく中で、住宅の供給が喫緊の課題となりました。その中において、昭和30(1950)年に日本住宅公団が設立されました。その最初の事業として、多摩平団地の開発が始まりました。
以下に住宅公団が作成した「富士が見える 多摩ニュータウン」のパンフレットの概要を紹介します。未開の荒野が、住宅公団の巧みな計画によって至便な土地に変わりました。今更ながら、読み返してみると、多摩平団地がなき後も、都市整備の基礎は今もしっかりと息づいていることが分かると思います。

 

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パンフレットの前書き

 

多摩平団地は、住宅公団が都下に建設中のニュータウン第一号です。こんなに大規模な都市建設事業は、わが国では公団が初めて手がけたものです。(中略)中央線で新宿から50分、多摩川をわたって豊田駅で降りると、眼前に展開する台地が多摩平です。西に関東の山々と富士の麗峰を望み、南に浅川、東に多摩川を見おろして、風光の美をほしいままにするほか、近くに多摩自然動物園をひかえ、高尾山へもバスですぐに行けます。このように、都塵を離れて空気は清く、日光も豊かにふり注いで、健康的な環境をもつこの地区は、中央線を乗換えなしに利用できるので、都内通勤者のためにも好適なベッドタウンの役割りを果たすでしょう。

 

この地区の面積は40万坪で、将来4,700戸の家が建ち、2万人の人が住むようになると想定して、つぎの基本計画が立てられてました。

  • 地区の中央に、町役場、警察署、消防署、郵便局、公民館などが集まり、行政センターをつくる
  • その隣に中央公園をつくり、運動場と憩いの森にする
  • 全地区に上下水道を設け、ガスを引く
  • 公団住宅2,100戸と日用品店を計画的に建てる
  • 小学校を2校新設する。(中学校は1校既設)
  • 診察所、幼稚園、集会所なども計画する
  • 安い宅地をたくさんつくって、一般に分譲する

 

工事の概要

 

多摩平団地の計画は、昭和30年、住宅公団が発足してすぐとりあげられ、現在、4か年計画で完成を急いでいます。全地区40万戸の区画整理に要する費用は約6億円(うち1億円は公共事業費)で、次の諸施設の建設にあてられます。なお、これとは別に公団は約3億円を投じて、用地買収、整地その他の宅地造成も併せ行っています。

 

街路…地区面積の16.8%に及び、全部に側溝を設けて排水を完全にします。主要街路は舗装し、巾員15m以上のものは、歩車道を区別して並木を植えます。このうち、都市計画幹線道路は、東京都が公共事業で施工します。


上水道…120mの深井戸を3本掘り、1日3,000立方メートルの水を配水池から直接ポンプ圧送します。この事業は、公団が特許水道として全区域にわたって経営します。

下水道…街路の85%に配管し、雨水と汚水を別にした分流式で排水します。汚水は、流末で2階槽高速撒布濾床法で完全処理して、浅川に放流します。

ガス…高圧輸送管を地区の中央まで引き込み、低圧管は、公団とガス会社が費用を分担して敷設します。その延長は、街路延長の20%以上になります。


宅地の利用計画

公団は、この区画整理後、買収地の換地と保留地を併せて約185,000坪を取得し、これを次のように利用する計画です。

 

公団住宅建設用地…50,000坪

一般分譲用地…75,000坪

学校その他公共建物用地…20,000坪