日野市多摩平8丁目のブログ

主に日野市多摩平およびその周辺の歴史や話題を語ります

UR集合住宅歴史館に行ってきました

年末に、北八王子にあるUR集合住宅歴史館を訪れました。

 

この展示館では、昭和30年代に相次いで建てられた公団住宅の蓮根団地・晴海高層アパート・多摩平団地のほか、建築史的に価値の高い同潤会アパートの住戸等を移築復元し、集合住宅技術の変遷をたどる展示を行っています。

年代を追って見学するので、初めに見るのは、昭和2年に竣工された同潤会代官山アパートです。独身用住戸、世帯用住戸ともに、個人の荷物の多い現代人には手狭な間取りですが、家賃は決して安くはなく、それなりの所得がないと入居できないようです。また、冷蔵庫がないのが特に印象的でした。

f:id:qsk7m:20220129155640j:image

f:id:qsk7m:20220129160431j:image

続いて見たのが、昭和32年に竣工した東京都板橋区に建てられた中層集合住宅・蓮根団地です。間取りは、2DKで決して広くありませんが、代官山同様それなりの家賃です。食寝分離でダイニングキッチンが日本の住宅に初めて登場しました。

f:id:qsk7m:20220129155726j:image

その次の展示が、私の訪問の主目的である、多摩平団地テラスハウスです。ブロック造2階建てで、昭和33年に竣工されました。
テラスハウスは、各住戸が専用庭を持つ長屋建ての低層集合住宅になっています。中に入ると、幼い頃、友達の家に遊びに行った記憶が沸々とよみがえってきます。日本住宅公団では、多摩平だけでなく松戸の常盤平などでも、庭を介した独特の住まい方を提供しました。庶民は、長屋の安普請に住むものという観念からの解放や、欧米並みの生活の豊かさを追求する当時の取り組みは、何とも素晴らしいものでした。

f:id:qsk7m:20220129160505j:image
f:id:qsk7m:20220129160501j:image
f:id:qsk7m:20220129160508j:image
f:id:qsk7m:20220129160503j:image

f:id:qsk7m:20220128125250j:image
また、多摩平では、構造上簡易なブロック造を始め、RC造の壁式やラーメン構造、プレキャスト工法のさきがけとなるTilt-Up工法などの模索が行われました。
サンウェーブ製のステンレス流し台なども登場しました。この流し台の完成秘話は、かつて放送された「プロジェクトX・挑戦者たち」でも取り上げられました。

f:id:qsk7m:20220129155752j:image

www.lixil.co.jp

 

多摩平の見学で、主目的は達成しましたが、展示は続き、次は晴海高層アパートに移ります。昭和 32 年入居が始まった晴海団地の中にある総戸数 168 戸、鉄骨鉄筋コンクリート造 10 階建の集合住宅です。高層から見る街の風景写真を見ると、ぐっと現代に近づいたような気分になります。間取りも多摩平より広く、またその分家賃が高くなっています。

f:id:qsk7m:20220129155821j:image

f:id:qsk7m:20220128125418j:image
当時のエレベータが何とも独特で、現在のような各階止まりができませんでした。3,6、9階に止まった後、上下の階には階段でいくという仕掛けになっていました。そのため、各居室への導線はまるで迷路のようになっており、専用の案内人がいたとそうです。何とも不便さはありますが、その分人々の雇用があって、生活が保障されていた時代だったと感じます。

f:id:qsk7m:20220129155849j:image
f:id:qsk7m:20220129155846j:image

最後に、玄関ドア、インターホン、風呂、トイレなどの住宅設備の変遷の展示を見学しました。玄関ドアなどは、昔のものは重厚な素材でしたが、塗装はぼろぼろに剥げていました。

f:id:qsk7m:20220129155922j:image
f:id:qsk7m:20220129155932j:image
f:id:qsk7m:20220129155925j:image
f:id:qsk7m:20220129155930j:image
f:id:qsk7m:20220129155927j:image

集合住宅歴史館は、令和5年春に北区赤羽台に移転予定です。北八王子の集合住宅歴史館は、3月31日で閉館となります。コロナ禍にもかかわらず、見学を受け入れてもらい、感謝の1日でした。

f:id:qsk7m:20220128125505j:image