日野市多摩平8丁目のブログ

主に日野市多摩平およびその周辺の歴史や話題を語ります

後出しでも健闘していた三成堂書店

豊田駅前の書店の思い出を振り返っていますが、2回目は三成堂書店を取り上げます。三成堂は、戦後八王子で開業した老舗の本屋です。神田発祥の「三省堂書店」と間違える人も少なからずいたことと思います。

 

かつては、八王子や国分寺に書店を展開していましたが、現在は閉店しています。

豊田駅前店は、現在の三菱UFJ銀行のあたりにありました。三成堂は、鉄生堂よりも後の昭和50年ごろに営業を始めました。鰻の寝床のように奥行きが長い店舗で、2階建てでした。1階には雑誌や文芸書、2階には学習参考書、漫画、児童書などがありました。

 

本屋は、「鰻の寝床」状であると、予期せぬところから他の客が近寄る可能性が少ないため、立ち読みの際の安心感が高まります。ヌードグラビアがあるような本はもちろんですが、一般的な本でも、自分が何を目にしているか、他人からあまり見られたくないものです。駅前に近い店舗で、客数も多いため、安心感は決して高くない店でしたが、鰻の寝床の三成堂は、鉄生堂に比べて背後の危険を感じない店でした。

一階の奥にあった文庫本が、一番安心して見ることができました。一方、グラビア雑誌は、入口に近いため、見たくても見る度胸がありませんでした。

 

子どもの頃に、結局多く買わざるを得なくなる本は学習参考書です。三成堂は学習参考書の取り扱いが豊富で、八王子のくまざわ書店や立川のオリオン書房に行かずとも、ほとんど間に合いました。そのため、鉄生堂よりも三成堂のほうが本の購入金額は多かったと思います。

 

また、マンガも、鉄生堂で立ち読み後に三成堂で買うことがしばしばありました。三成堂は2階に人気の少ないレジがあったので、他の客と遭遇する気配が少なく、本を買いやすい環境にありました。

 

追記

三成堂で買った思い出の一冊は、五木寛之の「雨の日には車をみがいて」です。都会で働く売れっ子コピーライターがアルファロメオ・スパイダー、ベンツ、ポルシェなどの外車を乗り継ぎながら、数々の女性と恋愛するという話です。車と女性を愛する大人の男の物語に、五木寛之自身の華麗な作家生活を重ね合わせて読んでいました。当時、似たような話である田中康夫の「なんとなくクリスタル」も話題だったので、両者を対比しながら読み比べていました。