日野市多摩平8丁目のブログ

主に日野市多摩平およびその周辺の歴史や話題を語ります

日野の図書館(4) 公共図書館の本尊・日野市立中央図書館の完成

昭和40年から分館を次々と建設する中、本館の中央図書館完成には、約8年の歳月を要しました。先進的な日野市の図書館サービスを象徴する本尊として、建設当時より全国的な注目を集めていました。

 

前川館長は、「中央図書館設計の基本方針」として、次の5つを掲げました。

  1. あたらしい公共図書館建築の道標となる図書館
  2. 親しみやすく入りやすい図書館
  3. 利用しやすく、働きやすい図書館
  4. 図書館の発展、利用の変化に対応できる図書館
  5. 歳月を経るごと美しくなる図書館

設計を担当したのは、当時東京経済大学図書館の設計などによって評価を高めていた鬼頭梓でした。鬼頭は、落ち着いた雰囲気の建物となるよう、外観はレンガ作りで北欧的なたたずまいとしました。図書館の敷地は八幡神社の境内でもあることから、神社の趣きとの調和も重要な建築の要素でした。後の公共図書館建築に多大な影響を与える作品となり、建築学会賞を受賞しました。

 

また、日本におけるモダン・ムーブメントの建築197選にも選ばれました。

http://www.fujiko-hp.co.jp/fujiko-cms-new/wp-content/uploads/2016/07/doc16070401.pdf

 

日野市立中央図書館の大きな特徴は、貸出をすることが本位となった作りである点にあります。開架の図書数は約8万5千冊、児童書は約1万5千冊を用意しました。

図書館の入口が前の道路に広く面していて、どこからも入りやすい工夫がされています。道路の前には広い窓があり、図書館の中の様子が外からよく分かります。また、自転車も停めやすいよう導線の配慮があります。

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広い入口

1階は、児童室と開架です。児童室は、入口右横に設けられ、開架は正面から奥に伸びる位置取りになっています。両方の部屋を分けないことで、子どもが親とはぐれにくくするようになっています。

また、1階には閲覧室がありません。開架の両脇にある椅子かソファに腰掛ける必要があります。時として席が埋まってしまうと、開架で立ち読みを強いられ、長居できずに引き上げることになります。

 

2階は、レファレンスコーナーと郷土資料、そして事務室があります。レファレンスコーナーは全部で20席あります。高校生の頃は、夏休みや冬休みのたびに開館から閉館まで全ての20席に順に座って本を読んでいました。中央図書館に入りびたりの生活でした。

郷土資料は、ここか市政図書室にしか置いていないものが多く、日野市の独自ネタを探すには貴重な情報コーナーです。

 

地下にも書庫があるそうですが、いまだに立ち入ったことはありません。

 

細かい点で運用当初と配置などが変わった箇所があり、前川の方針が現実に合わなかった点の修正もちらほら見受けられます。

 

50年の歳月が経ち、さすがに建物内部のあちこちに疲れがありますが、日野市の誇る建築物として、今後も使い続けられていくことでしょう。